名古屋市⽴⼤学 産科婦⼈科学教室

不育症・習慣流産のみなさんへ

13. 原因不明習慣流産に対する
免疫療法

人間の体には自分自身と他者を区別して、他者を排除する「免疫」の仕組みを持っています。母体にとって胎児は半分が他者であるにもかかわらず、免疫学的拒絶反応を免れています。Medawar 博士は1953年、妊娠を自然の移植成功例として捕らえ、

  1. 1胎児は抗原として未熟であり、母体免疫系に認識されない。
  2. 2子宮は免疫学的に特殊な部位にあり、母体の免疫能は妊娠中低下している。
  3. 3母児間は胎盤によって隔絶している。

といった仮説を提唱しました。この仮説は現在では否定的ですが、それ以来、移植免疫学的手法を用いた研究が積み重ねられ、現在の生殖免疫学の基盤が築かれました。
1981年、原因不明の習慣流産の治療として夫リンパ球による免疫療法が報告されました。当初、夫婦のHLA抗原の一致率が高いほど免疫療法が有効であると推測されました。つまりHLA抗原が類似していると子宮局所で胎児抗原が認識されず、免疫学的妊娠維持機構が成立しないために流産が繰り返されるという理論です。名古屋市立大学も1983年に日本で最初に免疫療法に成功し、習慣流産の分野で有名な施設になりました。その後この理論的根拠は否定されましたが、その後も本邦を含め免疫療法は約20年間行われてきました。しかし、1999年の二重盲検無作為割付試験(レベルIIa)によって免疫療法は生理食塩水と同等の出産率であり、無効であるという結果が示され、米国のFDAは感染、対宿主移植片反応の危険性もあるため、夫リンパ球を用いた免疫療法を「研究目的以外に行わない」ことを勧告しました。私たちもこの結果を重視して、現在免疫療法は行っておりません。

ページトップへ戻る